浸炭手法として、固体浸炭、ガス浸炭、液体浸炭、真空浸炭(真空ガス浸炭)、プラズマ浸炭(イオン浸炭)などがある。
木炭を炭素源とする。加工する金属を炭素と共に密閉し同時に加熱することによって発生する一酸化炭素が炭素源となる。
簡易であるが、加工品質のばらつきが生ずるために現在では廃れている。
シアン化ナトリウムを主成分とする無機塩を、高温で溶融させた塩浴によって浸炭を行う。
二酸化炭素・水素・メタン・水蒸気などを主成分とするガスによって浸炭を行う。現在ではこの方法が主流である。
真空引きした後、浸炭用のガスを注入して加熱する方法。
真空引きした後、浸炭用のガスを注入した後に高電圧をかけ、グロー放電によってガスをプラズマ化して浸炭を行う方法。
弊社と九州工業大学の共同研究によって、レーザビーム照射部への浸炭技術を開発した。
1.脱脂等、処理表面のクリーニング
2.浸炭剤の塗布
3.レーザビーム照射
4.浸炭部酸化被膜除去
断面写真 | 焼入層が0.5mm形成しており、浸炭焼入に成功している。そして最表面0.1mmの部分に、硬化皮膜層が新たに形成している。 |
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硬度 | 硬化皮膜層:HRC66~64 マルテンサイト層(混):HRC54~46 |
備考 | 硬化皮膜層と焼入層が形成されている。 |
最表層0.1mmに形成される、硬化皮膜層の結晶構造を特定するため、X線回折分析を行った。
なお、比較対象を容易にするため、S25Cのレーザ浸炭焼入層の分析も行った。
◎材料 | S25Cレーザ浸炭硬化皮膜層(表層0.1mm) 及び S25Cレーザ浸炭焼入層(0.2~0.5mm) |
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◎分析方法 | X線回折 |
(赤:焼入層の主な結晶構造)
マルテンサイト、フェライト、オーステナイトなど
(青:硬化皮膜層の主な結晶構造)
セメンタイト(Fe3C)、マルテンサイト、フェライト、マグネタイト(Fe3O4)、ヘマタイト(Fe2O3)
通常の焼入層のピークとは大きく異なり、結晶構造もセメンタイト(Fe3C)やマグネタイト(Fe3O4)、ヘマタイト(Fe2O3)などのピークが高くみられた。
前項のX線定性分析でCとOが多く検出されたが、それに比例しFe-C、Fe-O化合物が多い。
硬化皮膜層となる理由は、硬い結晶であるセメンタイト(Fe3C)の割合が高いからだと考えられる。
低炭素鋼やフェライト割合が高い材料に、レーザ浸炭焼入れを可能にした。
レーザ浸炭焼入れを行うと、マルテンサイト層とは別に最表面に硬化皮膜層が生成する。
硬化皮膜層が最も硬く、マルテンサイトのような「針状」ではなく「層状・粒状」の組織である。
硬化皮膜層は、主にC(炭素)とO(酸素)とFe(鉄)から構成されている皮膜である。
硬化皮膜層となる理由は、硬い結晶であるセメンタイト(Fe3C)の割合が高いからである。